愛しさと切なさとの間で
一日中、特にすることもなかったのでテレビを見ていたんだけど
ある番組でどこどこの美人店員さん!みたいなありきたりの企画?をやっていたんだ。
特に興味があったわけでは無かったんだけど、
ほらー僕って二十歳をとっくの昔に過ぎていながら
今でも本気で結城リトになりたいとか思っていたりー
ラッキースケベのような日常のToLoveるを求めて意味もなく渋谷を徘徊するみたいなー
思春期が止まらないみたいなところがあるじゃないですかーー
ねーーー超ウケるwwww
(コホン
えーっと、つまりは僕も立派な男子の端くれであるから、”美人な店員、なんて甘美な響きだ~!”なんて、心の中はちょっとした夏フェスみたいになってたんですけど
なんだったら、腕をブンブン回しながら完全装備のもと全力でヲタ芸を披露したい心持ちだったわけですが
もうね僕は23なんですよ。
青春時代を一緒にアキバで過ごしたヲタ仲間たちだって23にもなりゃ就活だ、大事な時期だなんつって
どれほど声高らかに「ヲタ芸仲間」を募ったところで、こんな平日の昼間からテレビの前の美人さんに向かって共に汗を流してくれるような人間ははいないわけです。
なんていうのか、よくわからない間にみんな卒業していたらしいです。
時間の流れって残酷。
だからつまるところ、
みんなが23で、た行が言えねえ奴はいねえなっていうのと同じで、
23なんて言ったら、当然美人なんて言葉に胸を躍らせてる場合じゃないわけですよ
もう話題は専ら「第一志望はどこにするか」とか「自己PRはなんて書いた?」とか、そういうことなんです。
どこにも俺の嫁とかが入る隙間なんてないんです。
だから僕は、心躍らせているのを悟られまいと
あくまでダンディーで大人な男性を演じつつ、ポーカーフェイスで見守っていたわけですが
長いCMを挟んで、やっと出てきた美人さんは
それはそれはお顔の広そうな美人さんでした。
初見なはずの美人さんのお顔。何処かで見たことあると思い、必死でググって見つけた既視感の正体。
それはあたしンちのお母さんでした。
(参考)
完全に一致。
おそらくその美人さんとあたしンちのお母さんは先祖が一緒なのだろう。実の娘より似ている。
不思議とあれほど盛り上がっていた夏フェスが終わり、
唐突な虚無感に襲われ、静かにテレビを消し、横になった。
ガキどもにコーヒーの美味さが分からないように
若者に寿司のエンガワの良さが伝わらないように
僕にはまだまだ分からない上級者向けの美人であった。
あぁ…誰かキツく抱きしめてくれませんか?