Travel Incidents

"旅に出る"理由は"あの時、旅に出た"理由を見つけるため…そのために僕らは今日も旅に出る…

LINEを介した初ゲリラ

 『早く寝ないとサンタさんが来なくなるよ!』と言われ続けて、早22年。

そんな啓示に忠実に従った純潔な少年に、サンタはおろか彼女の一人も訪れる事もなく。

 

毎年のおみくじもここ数十年、恋愛の欄「待ち人来ず」。

『彼女...が.....欲しぃ......』と、 

ありったけの煩悩を込めて引いても、待ち人は来ず。

何かの間違いだと思い、来ない待ち人を一人待ち続けて数十年。

もう足が棒になる状態など優に超え、そろそろ忠犬ハチ公の名を襲名しそうな勢いすらある。

そしてまた人は抱負という名の決して叶わぬ誓いを建てるのである。

『今年こそは……‼』と。

 

 

 

僕が「フェブラリーー!!」って感じで元気に生まれてきて、

自我が芽生える前から‘‘彼女‘‘という言葉に洗脳され続けた結果、

車を「ブーブー」と呼んでいたあの可愛い少年は、すでに二十歳を超えて哀愁すら醸し出す年になった。

22歳。彼女はおろか女友達さえできたことのない陰キャ男。

50年という時代から生み出される親父の哀愁など、自分が17歳の時には抜かしていた。

このままいくと実年齢すら親父を抜かしてしまいそうな勢いがある。

そんな哀愁、僕にはいらない。

 

 

特に何の成長もないまま迎える新年ほど虚しいものはない。

昔の人は言っていたじゃないか。『果報は寝て待て』と。

しかし、黙って寝ていても果報など一向にやって来ず。無慈悲に来るのは誕生日。

 

そう。誕生日。

毎年毎年、飽きることなく決まった日にやってくる誕生日。

一度も休んだことない。皆勤賞。

お前、真面目かっ!

 

 

 

これだけは言っておくけど、誰もお前を待っていない。一回休んだくらいで罰は当たらない。

いや、罰なんて当たらせない。

 

こちとら成人式を祝い終わった頃辺りから老化がヒドイ。

トイレに入った瞬間に自分が何しに来たか忘れたり、

運動不足過ぎて腰とか田舎のおばあちゃんより曲がってる。

たまに意味もなく震えたりしてる。

もう、ガラケーみたいになってる。

 

 

だからすでに「♫もーいくつ寝るとー♪お正月―」なんて心躍らせている場合じゃないんですよ。

そんな感情はランドセルの中に置いてきたんです。

ランドセルで大学に通う奴が変人扱いされるように、

ルフィ―だって20を過ぎて『海賊王に俺はなる‼‼』なんて言ってられないわけ。

海賊王になる前に早く正社員になってくれと言われるわけでね、

やっぱり、年相応、っていうのがあるんです。

 

 

22にもなったら、

お風呂でおしっこをするわけにはいかないんだって自制も働いてくる。

どんな美少女だってウンコをするときに力んだりするってことも薄々分かってくる。

そして、いつまでも純潔だと胸を張っているわけにも行かないんですよ。

 

 

でもねー無駄に年を重ねすぎた感が強すぎるっていうか

昔は確実にお互いがお互いを嫌ってた。はずなんだけど・・

 

時間が経つにつれてさー、あの、なんていうかな・・・戦友?

倦怠期や反抗期、またまたたくさんの修羅場を乗り越えてきた仲間意識?

みたいのが強くあって、今では純潔ということに誇りすら芽生えてきて、

そろそろ我が純潔に名前を付けてあげるべき時期かなーなんて思ったりしている昨今です。

 

 

 

 

 

そうそうつい先日、長年交流の無かった女友達から突然のLINEがあって、それはもうアッと驚く為五郎!てな感じで

マンガだったら石の字で書かれるくらい驚いた。

なんせ普段誰かから連絡が入ることなんて、スマホ所持歴5年の中堅にして、今まで一度もなかったわけで。

携帯のメモリー数ですら20にも届かず、日頃『総理大臣の支持者よりは多いかもしれん。』と決め込んで、平静を保ってきた僕にとっては、言うなれば渋谷でツチノコに出会うくらいの快挙。

 

 

でも僕なんかは結構、カンが働いちゃうタイプだから

画面上になんか見知らぬ緑のアプリがあるなーとか

そういえば遠い昔に登録したっけなーとか

これがネットで噂の既読がどうとかいうやつじゃないかなーとか

じっちゃんの名に懸けて、高尚な推理を日頃から展開していたわけです。

 

だから、あまりLINEというものに馴染みがない人生ながらも情報量としてはそこそこあるわけ。

それこそまだまだ若者には遅れは取らんぞ!ってな感じで

僕をジジイと呼ぶ近所の三歳児を打ち負かしたる!みたいな心意気でもって

意気揚々とLINEを開いてみたんです。

 

 

 

「ねぇ、好きかも。」

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

おっと、見間違いか?と思って一旦閉じた。ちょっと休憩しよう。

もう一度見る。やっぱりそう書いてあることを確認してから、やっぱりまだ信じられなくてもう3度見。

 

 

 

やっぱり書いてある。「好き」って。

好きってあれでしょ。英語にするとI love you.ってなるやつでしょ。

夏目漱石とか名立たる文豪とかが『月がきれいですね。』とか、不必要にオシャレに訳したやつでしょ。

人間と人間の腹黒さが合わさって大きな混沌を生み出すアレでしょ。昼ドラでよく見るやつ。

『好き』って書いて『カオス』って読むんでしょ。知ってるんだから。

 

 

でも、僕はそういうのとは違う世界で生きているんだと思ってた。

シン・ゴジラが実在しないように

人が二次元に行けないように

芸能人の不倫が尽きないように

『好き』って言うのも夢の国だけだと思ってた。

 

 

だから、必要以上にテンパったよ。

狭い部屋の中を携帯片手にグルグルと歩き回ったり、無駄に襟元を正してみたり、

チンポジも10回ぐらい直してた。

どうしたらいいか分かんなくて、お母さんに電話しちゃったよ。留守だったけど。

 

でも取り敢えず自分の力で返信。

 

『ネガティブな奴に返信を求めるのは君のエゴだよ。』

 

 

「そんな感じが気持ち悪い。同窓会の罰ゲームに決まってんだろ。」

なるほど、そういう可能性は考えてなかった。

 

『でもこんな感じの自分が好き。』

「そうですか。なんか最悪の年になりそう。」

 

子供の頃、無意味にハンコ注射なるものを大人にされてから、大人は信用しないと決めたことを思い出す。オソトハコワイ。

 

 

 

2018年の抱負「彼女を今度こそ作る!!」

やっぱり、新年の抱負なんてものは叶わぬ願いに過ぎないのかもしれない。

でもこんな感じのやり取りに終始心が躍っていたのは内緒。

今年も僕らしい一年になりそうです。

明けましておめでとうございます!